「治す」ことより、「整え方」を伝える道を選んだ鍼灸師の話

🕊 2025.11.14 🗂️ 編集者紹介(小川亮太)

整えるというテーマは、ずっと前から。

今日は少し、自分のことをお話ししようと思います。
どうして鍼灸師になったのか、そしてなぜ「治す」より「整える」という考え方にたどり着いたのか——。
そんな“今の私”ができるまでの話です。

思えば、高校の理系学科にいたころから、私は「構造」や「仕組み」に強い興味がありました。
大学は、和歌山県にある国立の 和歌山大学 システム工学部 環境科学メジャー に進学。
インフラやエネルギー、構造解析を学び、「どうすれば“効率よく整う”か」を考えるのが性に合っていました。
卒業後は、土木インフラメンテナンス会社で橋梁などの維持管理を担当。
就職の理由は…正直、給料が良かったのが半分(笑)。もう半分は、壊れたものを直すより「構造全体を最適化する」仕事に興味があったから。
今思えば、この“整える”というテーマはずっと自分の中にあったのだと思います。

理系人間が、合気道にハマった理由。

合気道の発祥地・和歌山。
そんな地元の国立大である和歌山大学には、全国でも最古の合気道部があります。
部員規模は50人ほどで、OB・OGの出入りも多く、本部道場や外部道場との交流も盛ん。
いわゆる「ホンモノの技」に触れる機会が非常に多い環境でした。
そんな中で、体験稽古で“物理的に理解できない”動きを受け、即入部したことが私の転機でした。
それ以来、重心や張力、力の伝達を理系的に観察し続け、体の構造の合理性にどんどん惹かれていきました。

合気道を稽古していく中で、予想外の副次効果もありました。
慢性的な肩こりや腰の痛めやすさ、IBS(過敏性腸症候群)まで、気づけば自然と改善していったんです。
幼少時代から体にすぐガタがきていて、気合いだけでなんとかしてきたような自分でも、
体の使い方が変わるだけで、体が軽くなり、呼吸が深くなり、動いても疲れない。
「構造を整えると、人は勝手に健康になる」——そう確信した原体験でした。

そして不思議なことに、合気道で学ぶことの多くは構造工学の世界とつながっていました。
支点、張力、力のベクトル、分散と吸収。すべて、物理的整合性がある。
だからこそ惹かれたのだと思います。感覚的でも、理屈でも、ちゃんと説明がつく世界でした。

教えることは、学びの延長線。

大学時代は、合気道部の主将として部員に指導をしていました。
いわゆるカリスマ型ではなく、“理屈の解説や気づきのフィードバックを大切にするタイプ”。
自分の理屈解説で後輩が同じ動きを再現できるかを一緒に検証するうちに、
自分の理解も深まり、相手の感覚も開いていく——そんな循環が心地よく、指導がどんどん楽しくなっていきました。

印象に残っているのが、ある後輩の一言。
「小川さんに数分指導してもらったら、1年くらい修行した感覚になるから面白いんですよ。」
その言葉を聞いたとき、体の感覚の世界では「できるようになる」こと以上に、
“できている理由がわかる”ことに意味があると実感しました。

今もOBコーチとして、母校・和歌山大学合気道部で後輩たちの稽古に関わっています。
後輩たちの成長をそばで見守る時間が今でも好きです。

💡豆知識:合気道の「力を抜く」は、実は“力をやめる”ことではありません。
力の通し方、分散のさせ方を最適化して、余分な抵抗を減らすこと。
鍼灸でも姿勢でも同じで、整うとは「無駄な力を手放す」ことなんです。

鍼灸の世界へ。医療より“整える技術”として。

大学卒業後は社会インフラを整える仕事に就きましたが、合気道を通して“体も構造物のように整う”と確信が芽生えたころ、今度は「人の体というインフラ」に関わりたいと思うようになりました。
自分の得意は、体を構造的に扱うこと。医学というより、“体の仕組みをどう整えるか”に興味があったんです。
合気道では、力で動くよりも“全身の張りと重心のバランス”で動く感覚を学びました。
その法則をもっと体系的に知りたくて、辿り着いたのが東洋医学(中医学)や筋膜理論でした。

東洋医学と聞くと、なんとなくスピリチュアルな印象を持つ人もいるかもしれません。
でも実際に学んでみると、“気”や“陰陽”といった言葉の奥に、驚くほど現実的な体の仕組みが隠れていたんです。
たとえば“気”は神経や呼吸のリズム、“血”は栄養と循環、“水”は体の潤いと冷却システム。
つまり昔の人が、科学の言葉がない時代に、体を観察して作った“統計モデル”だった。
「これ、めちゃくちゃ理系の考え方じゃないか」と気づいたとき、完全にハマりました。

💡豆知識:東洋医学の「気」は、今で言う自律神経や筋膜、呼吸の働きをまとめて表す言葉。
つまり“ふわっとしたエネルギー”ではなく、“体が回る仕組み”そのものなんです。

その後、専門学校で東洋医学を学びながら、推拿(すいな)療法や筋膜治療の研修勤務を重ねたり
難病専門鍼灸院にて中医師の指導を受けながら、高度な臨床現場での研修勤務も修了しました。
また、医薬品登録販売者の資格も取得し、セルフメディケーションの視点からも体を見つめ直しました。
しかしながら、治療の現場で気づいたのは、どんなに良い施術でも、日々の姿勢・呼吸・睡眠が乱れていればまた不調に戻ってしまうという現実。
それとは逆に、知識が増えていく自身の体はどんどんラクになり、合気道も上達していくというジレンマ。
だから私は、「治療のスペシャリスト」ではなく、鍼灸で得た知識をブログやアプリ開発に活かし、“整える力を育てる”方向に活かす道を選びました。

いつか、“ラクな身体の使い方”を伝える場所もつくりたい。

鍼灸を学び、東洋医学を知り、現場で多くの人の不調に触れて感じたのは、
体を整えることは特別な才能ではなく、日常をラクにする生活技術だということ。
合気道で得た学びと医療で得た知識を融合し、「誰でも日常で使える身体の使い方」を伝える道場や教室などと言った場所をつくりたいと思っています。
東洋医学や古武術の身体操作は、一見あやしく見えても、古代の人が日常の中で実践し確かな実感を得てきた知恵の集積。
未病ケアの意識が広がる今だからこそ、医療人として“体をラクに使う知恵”を伝えていきたいです。

現在は、公式LINE上でのAIセルフケア支援サービス「ととのうケアナビ」を開発・運営中。
一人ひとりの体質や状態をデータとして観察し、整える行動を習慣化できる仕組みをつくっています。
“観察のめんどくささ”を減らすことで、セルフケアをもっと日常に。
それが、今の挑戦です。

私が大切にしていること

  • 理屈で考えて、体で確かめる。
  • 人を整える前に、自分を観察する。
  • 学びも仕事も、“整う感覚”のある方へ進む。

最後まで読んでくださってありがとうございます。
もしこの考え方に少しでも共感してもらえたら、うれしいです。
体の整え方やセルフケアのヒントは、このブログ「ととのうケアブログ」で発信しています。
また、AIがあなたの体質や状態に合わせてケアを提案してくれる 「ととのうケアナビ」 も、あわせて活用してみてください。
一緒に、無理なく“整う”を日常にしていきましょう。

p>

小川亮太

監修者:小川 亮太(おがわ りょうた)

鍼灸師・医薬品登録販売者。東洋医学とAIを融合したウェルネスサービス『ととのうケアナビ』を監修。
「自分の体を自分で整える」ための東洋セルフケアを発信中。

▶ 詳しいプロフィールを見る